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かん水と製麺技術の科学 — 中華麺はなぜ黄色くてコシがあるのか

公開日 2026-09-09 ・ 執筆 大森商事

うどんも中華麺も原料は同じ小麦粉です。それなのに中華麺だけが黄色く、独特の弾力と香りを持つのは、小麦粉に「かん水」というアルカリ性の水溶液を加えるからです。この記事では、かん水が生地の中で何をしているのか、そして加水率・番手・熟成・手揉みといった製麺の技術が、私たちの感じる「コシ」や「喉ごし」をどう作っているのかを順に見ていきます。

かん水は何をしているのか

かん水 (鹹水) は炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを主成分とするアルカリ性の水溶液で、使用量は小麦粉重量に対しておよそ 1〜2% が目安とされます。多すぎると麺にえぐみや強いかん水臭が出るため、店や製麺所ごとに配合が微調整されています。

かん水の働きは大きく三つあります。一つ目は色。小麦粉に含まれるフラボノイド色素がアルカリと反応して黄色く発色します。近年は小麦粉の精製度が上がってフラボノイドの含有量が減ったため、クチナシ色素などで補色する製麺所も多くなりました。二つ目はコシ。アルカリがグルテンを引き締め、中華麺特有の弾力を生みます。三つ目は保存性で、小麦粉中のタンパク質分解酵素 (プロテアーゼ) の働きを抑えるため、グルテンが分解されにくくなり、コシが維持されやすくなります。

コシの正体はグルテン

小麦粉に水を加えてこねると、タンパク質のグルテンが網目状に形成されます。グルテンは性質の異なる二種類のタンパク質、粘性を担うグリアジンと弾性を担うグルテニンが絡み合ってできており、この二つのバランスが麺のコシを左右します。中華麺にグルテン含有量の多い強力粉や準強力粉が使われるのはこのためで、薄力粉はケーキ、中力粉はうどんに向いた粉です。

茹でる工程では、でんぷんが水と熱で膨潤・崩壊して糊状に変わる「糊化 (アルファ化)」が起こり、これが麺のもちもち感の一因になります。逆に、茹で上がった麺をスープに浸したままにすると、でんぷんが水分を吸って膨潤し続けるため食感が損なわれます。これが「麺が伸びる」現象の正体です。

加水率が食感を分ける

加水率とは小麦粉に対する水の割合です。加水率が高い多加水麺はツルツルした喉ごしとモチモチしたコシが特徴で、伸びにくく熟成にも向きます。喜多方ラーメンや佐野ラーメンの平打ち縮れ麺が代表例で、喜多方では加水率 40% 前後の麺が使われます。

一方、加水率 28% 程度の低加水麺は博多豚骨ラーメンの極細麺に代表されます。スープを吸いやすくすぐ茹で上がる代わりに伸びやすいという性質があり、この性質が「大盛りではなく麺だけをおかわりする」替え玉文化を生んだとされます。

番手・熟成・手揉み

麺の太さは切刃の「番手」で表します。番手は 30mm 幅の生地から何本切り出せるかを示すので、数字が大きいほど麺は細くなります。22 番は 30 ÷ 22 で約 1.36mm の太麺、26 番は約 1.15mm、28 番は約 1.07mm の細麺です。

製麺直後の麺はグルテンの網目構造が不均一なため、低温で数時間から数日間「熟成 (寝かせ)」させると構造が均一化し、滑らかなコシと喉ごしが生まれます。製麺の「複合」工程で 2 枚の粗麺帯を重ねて 1 枚にするのも、手打ちうどんの足踏みに相当する効果でグルテン組織を密にし、強度と均一性を高めるためです。

縮れ麺は表面積が大きく、波打った形状にスープが入り込むためよく絡みます。機械製麺では切刃の出口にシリコンゴムなどを取り付けて麺線を圧縮させることで波状の縮れを作り、手揉みでは製麺後の麺を手で揉んで表面に微細な凹凸を付けます。喜多方や白河、家系の一部の店で採用されている技法です。

確認クイズ(13 問)

この記事で扱った内容から出題。「正解と解説を見る」を開く前に答えを考えてみてください。 本番のクイズは知識クイズから挑戦できます。

  1. Q1. 一般的にラーメンの「中華麺」に独特のコシと風味を与える、小麦粉に加えるアルカリ性の水溶液は何でしょう?

    • ① 重曹水
    • ② かん水
    • ③ 出汁
    • ④ 塩水
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    正解:② かん水

    かん水(鹹水)は炭酸ナトリウムや炭酸カリウムを主成分とするアルカリ性水溶液で、小麦粉のグルテンと反応して中華麺特有の黄色味とコシを生み出します。

  2. Q2. 中華麺がかん水を使うと黄色みを帯びるのは、小麦粉に含まれる何という色素がアルカリ性のかん水と反応するためか?

    • ① カロテノイド
    • ② フラボノイド
    • ③ アントシアニン
    • ④ クロロフィル
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    正解:② フラボノイド

    小麦粉に含まれるフラボノイド色素はアルカリ性のかん水と反応して黄色く発色する。近年は小麦粉の精製度が上がりフラボノイド含有量が減ったため、クチナシ色素などで補色することも多い。

  3. Q3. かん水が中華麺に与える効果として、グルテン構造の強化以外にもう一つ知られているのは?

    • ① 小麦粉中のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の働きを抑える
    • ② 麺の中の水分を完全に蒸発させる
    • ③ 小麦粉のでんぷんを分解して糖に変える
    • ④ 麺の中に気泡を大量に作る
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    正解:① 小麦粉中のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の働きを抑える

    かん水に含まれる炭酸ナトリウムや炭酸カリウムはアルカリ性であるため、小麦粉中のタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の活性を抑える効果もあり、グルテンが分解されにくくなることで麺のコシの維持に役立っています。

  4. Q4. 小麦粉に水を加えてこねることで作られる「グルテン」は、性質の異なる2種類のタンパク質が結びついてできている。粘性を与える成分と弾性を与える成分の組み合わせとして正しいのは?

    • ① グリアジン(粘性)とグルテニン(弾性)
    • ② アミロース(粘性)とアミロペクチン(弾性)
    • ③ カゼイン(粘性)とアルブミン(弾性)
    • ④ ペクチン(粘性)とデキストリン(弾性)
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    正解:① グリアジン(粘性)とグルテニン(弾性)

    小麦粉のタンパク質の大半はグリアジンとグルテニンから成り、水を加えて練るとこの2つが絡み合ってグルテンを形成します。グリアジンは粘性、グルテニンは弾性を担い、両者のバランスが麺のコシに影響します。

  5. Q5. 麺を茹でる際、小麦のでんぷんが水と熱によって膨潤・崩壊し、麺特有のもちもちした食感を生み出す現象を何という?

    • ① 糊化(アルファ化)
    • ② 老化(ベータ化)
    • ③ 酸化
    • ④ けん化
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    正解:① 糊化(アルファ化)

    生のでんぷんは硬い結晶構造(ベータでんぷん)ですが、水を含んだ状態で加熱すると粒が膨潤・崩壊して糊状の「アルファでんぷん」に変化します。これが「糊化(アルファ化)」で、麺のもちもち感の一因です。逆に冷めて硬くパサつく現象は「老化(ベータ化)」と呼ばれます。

  6. Q6. ラーメンの製麺で「加水率」が高い麺の一般的な特徴は?

    • ① スープを吸いやすく、ぼそっとした食感になる
    • ② ツルッとした喉ごしでコシがあり、伸びにくい
    • ③ 麺がもろくて切れやすい
    • ④ 色が真っ白になる
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    正解:② ツルッとした喉ごしでコシがあり、伸びにくい

    加水率が高い(多加水)麺はツルツルした喉ごしとモチモチしたコシが特徴で、伸びにくく熟成にも向きます。喜多方ラーメンや佐野ラーメンなどが代表例。

  7. Q7. ラーメンの「低加水麺」が多用される代表的なラーメンジャンルは?

    • ① 博多豚骨(極細・低加水)
    • ② 喜多方ラーメン
    • ③ 佐野ラーメン
    • ④ つけ麺の太麺
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    正解:① 博多豚骨(極細・低加水)

    博多豚骨ラーメンの極細麺は加水率28%程度の低加水麺で、スープを吸いやすく、すぐ茹で上がる代わりに伸びやすい特性があります。これが替え玉文化の発祥につながっています。

  8. Q8. 麺の「切刃」番手で22番の麺の太さは約何mm?

    • ① 約0.5mm
    • ② 約1.36mm
    • ③ 約2.5mm
    • ④ 約4mm
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    正解:② 約1.36mm

    切刃番手は30mm幅の生地から何本切るかを示すので、22番=30÷22=約1.36mm幅の太麺、26番=約1.15mm、28番=約1.07mm(細麺)、20番=1.5mm(極太)となります。

  9. Q9. 製麺後に「熟成(寝かせ)」させる目的として最も適切なのは?

    • ① グルテン構造を均一化し滑らかな食感にする
    • ② 麺を乾燥させる
    • ③ かん水を抜く
    • ④ 麺の色を白くする
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    正解:① グルテン構造を均一化し滑らかな食感にする

    製麺直後の麺はグルテン網目構造が不均一なため、低温で数時間〜数日間熟成させることでグルテンが均一化し、滑らかなコシと喉ごしが生まれます。

  10. Q10. 製麺の「複合」工程で、2枚の粗麺帯を重ね合わせて1枚にする最大の目的は?

    • ① 麺の色をより黄色くするため
    • ② グルテンの網目構造を密にし、麺帯の強度・均一性を高めるため
    • ③ かん水の使用量を減らすため
    • ④ 茹で時間を短縮するため
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    正解:② グルテンの網目構造を密にし、麺帯の強度・均一性を高めるため

    2枚の麺帯を重ねて複合することで、手打ちうどんにおける「足踏み」に相当する効果が得られ、グルテン組織が密になって麺帯の強度と食感の均一性が増す。

  11. Q11. 機械製麺でちぢれ麺(波状の縮れ)を生じさせる代表的な方法は?

    • ① 麺を茹でた後に手で揉む
    • ② 切刃の出口にシリコンゴムなどを取り付け、切り出された麺を圧縮させる
    • ③ かん水の配合比率を極端に高くする
    • ④ 麺帯を冷凍してから切る
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    正解:② 切刃の出口にシリコンゴムなどを取り付け、切り出された麺を圧縮させる

    切刃の出口に抵抗となるシリコンゴムなどを装着し、押し出される麺線を圧縮させることで波状の縮れが生まれる。ほかに手もみでちぢれを加える製法もある。

  12. Q12. 麺の「手揉み」を行う主な目的は?

    • ① ストレート麺の角を取り、表面に微細な凹凸を作りスープ絡みを良くする
    • ② 麺を細くする
    • ③ 麺の色を変える
    • ④ 麺を硬くする
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    正解:① ストレート麺の角を取り、表面に微細な凹凸を作りスープ絡みを良くする

    手揉みは製麺後の麺を手でクシャッと揉んで縮れを付ける作業。表面の凹凸が増えてスープ絡みが良くなり、不規則な食感も生まれます。喜多方や白河、家系の一部などで採用されています。

  13. Q13. 中華麺の製麺で使われる「かん水」の使用量は、一般的に小麦粉重量に対しておよそ何%程度が目安とされるか?

    • ① 0.1%未満
    • ② 1〜2%程度
    • ③ 10%程度
    • ④ 30%以上
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    正解:② 1〜2%程度

    かん水の使用量は小麦粉重量に対して1〜2%程度が目安とされ、多すぎると麺にえぐみや強いかん水臭が出てしまうため、店や製麺所ごとに微妙な配合が調整されている。

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